消失長門のレイプ

ここ数日続いた不条理の連続。

「初対面の」朝比奈さんを泣かせてしまったという事実はその集大成とでも言えるだろう。

俺はほとんど八つ当たりのように目前の障害物を払いのけた。

目前の障害物というのは文芸部部室のドアで、払いのけたということはつまり相当乱暴に開けてしまったということだ。

「いてくれたか」

長門はビクッと立ち上がり……ビクッと立ち上がり？

一瞬感じた違和感よりも、これで助かった、頼りにしてるぞ長門！という気持ちが先走っていた俺は、

立ち上がった長門の肩を半ば襲いかかる勢いで掴んだ。

そして視線が合い……そこで初めて怯えた震えに気付いた。

カタカタと歯を鳴らしながら華奢な文学少女は俺を見つめ、そして責めるような涙目とともに紅潮した。

この「初対面の少女」はただの内向的な女子高生なのだ。俺はようやく気付いた。

この長門は宇宙人だったり、時間を凍結したりはしない。

見た目通りの保護欲を掻き立てる華奢でたおやかな少女でしかない。

俺は絶望した。

「すまん」

謝ってみて初めて足元にできた水溜まりに気付いた。

ん？

水溜まり。責める涙目。紅潮した顔。

長門は失禁していたのだ。

「すすすすまん！」

すっとんきょうな声を上げた俺は、何を思ったかハンカチを取り出しざまに屈み、長門の細い太股を拭き始めてしまった。

妹にしてやるノリでついそんな行動に出てしまったのだ。

俺の目前には尿で微かに透ける下着があった。

後の祭りだ。

濡れたパンツと対峙した視線を恐る恐る上げてみた。

長門の恥じらう顔がそこにあった。

しかし責める視線はなく、ただただ戸惑うばかりの涙目と、口許に手を寄せる極めて少女らしい仕草が待ち受けているばかり。

俺は奇妙な、保護欲というよりは慰労感だろうか？そんなものを感じていた。

観察任務や、俺の預かり知らぬ所での守護、保守。

そういった役務から解放された長門に、俺はご苦労様と心の中で呟きながら汚れた太股を拭く。

妹にしてやるように。

他愛なくか細い存在を慈しむように。

しかし同時に性欲の疼きを感じながら。

全部拭いてやらねばという父性が半分、純粋な肉欲が半分ずつ。

長門はなされるがままだった。

時折熱い吐息が漏れて俺の欲望を煽る。

そうなのだ。

この長門は時空を操作するような万能の存在ではない。

力ずくで野卑な肉欲に曝された時、なす術なく弄されるただの少女でしかない。

俺は汚れた下着に手をかけて下ろす。

父性が警鐘を鳴らしていたが、俺にはひどく小さく聞こえた。

そして長門の性器を間近に見るに至り、肉欲が全てになってしまった。

俺は長門の柔らかい秘肉に唇を埋めた。

弾かれたように長門は太股を懸命に閉じようとするが、見た目通りの非力さしかなかった。

長門にすがりたい気持ちと性欲とが複雑に絡んで、俺は後先考えず長門を陵辱していた。

どう言い訳してもこんな状況が許されるわけがない。

だが、俺には言い訳をする機会すら与えられてなかったんじゃないか？

さっき部室のドアにしたように、不躾で身勝手な八つ当たりかもしれない。

それでも、この少女が長門である限り何とかしてくれるだろう、

いや、何とかしてくれという苛立ちが性欲に訴えかけて最悪の形を取っていた。

壁にもたれながら俺の舌を受け入れるしかない長門は、涙声を駄々漏れにしながらイった。

先刻、長門が読んでいた本が床に落ちているのをそのとき初めて気づいた。

その二時間後。

俺は長門の部屋にいた。

住所はこの長門に教えてもらわなくても知っていたし、部屋の内装も知っている。

隣の和室で三年寝ていたくらいだしな。

欲望任せに押しかける事も今なら多分できるだろう。

しかし、どういうわけかこの長門は自ら俺を招いた。

理由は分からなかったが、少なくとも膠着した状況を好転させるチャンスではある。

そう自分に言い聞かせて俺は理性を保った。

俺をコタツに座らせて、長門はほうじ茶をお盆に載せて持ってきた。

カタカタと小刻みに茶器が鳴っているのは長門が震えているからだ。

無理もない。

さっき失禁を見られたあげく、股間に顔をうずめられ、舌で散々陵辱された相手なんだ。

俺の唇と舌に生々しい感触と味が蘇って来て疼き始めた。

コタツ布団があって良かった。やましい部分がとりあえず隠せる。

だいたいお茶もまともに運べないほど緊張するなら招かなければいいのだ。

俺は逆恨みしながら長門を見守る。やれやれ、つくづく最低だな俺は。

長門は危なっかしく座卓にお盆を置こうとして、

失敗した。

「ひっ」

小さく驚く声と、取り乱した仕草。揺れるスカートとその奥の光景。

「長門！」

と反射的に出した俺の手が長門の手に触れる。袖口をぐっと掴むと布の下の華奢な手首に驚く。

「大丈夫か？」

長門の頬が朱に染まった。

ヒューマノイドインターフェイスの長門の方ですら、俺はミリ単位で挙動を読めるようになっている。

そんな繊細な俺がここまで恥じらいを前面に押し出して額に飾った状態の長門を見てみろ、

張り詰めていた理性のタガが高らかな音を上げて弾けたって仕方がないじゃないか。

俺はまるで襲いかかるかのように、いや完全にレイプをする勢いで長門のスカートの中に手を差し入れた。

学校で下着からブルマに履き替えていたため、俺の手には厚手の生地の野暮ったい感触が伝わってくる。

ミシッと音がして縫い目が弾け、長門の細い脚に生地が食い込んで赤い跡を残す。

当然悲鳴を上げるが、そのかぼそい声は俺を煽ってしまい躊躇なくブルマを剥ぎ取る結果となった。

再び長門の性器と対峙する。

先程よりも遥かに扇情的な角度で無防備に晒された構造を凝視する。

愛液が滲んでいるのを見つけ、俺の脳は欲情の熱で蕩けてしまった。

長門の声は拒否の呟きを漏らし、目には涙が溢れていたが、明確に続きを望む危険な光を孕んでいた。

俺は無意識のうちに下半身を露にしていたようで、そのような早業を可能にした人間の生殖本能というものに奇妙な感心を覚えた。

夢中で亀頭を愛液の源泉に押し当てる。

想像を遥かに越える柔らかに淫猥な感触に驚くが、それ以上に俺は焦っていた。

長門の心が変わらないうちに、いま成されている怒濤のような展開に長門が流され切っているうちに、俺は腰を押し進め長門の処女を奪った。

破瓜の痛みに貫かれて震える華奢な体が海老のように反り、つながりが絶たれた。

処女の証に赤く染まった部分が俺の理性を吹き飛ばし、さっきよりも強引に長門の中へ再び捻じ込む。

視線の定まらない苦痛に歪んだ表情とに十分支配欲を煽られた俺は、長門の制服をたくしあげて薄い乳房をなぶった。

恐怖に震えながら紡がれる拒否の言葉は、それでも艶を帯びていた。

長門の体内を幾度も幾度も往復し猥褻な感触を貪る。

存分に蹂躙しながら、俺は長門の表情を嘗め回すように眺めた。

内向的な性格にレイプ願望を秘めていた文学少女。

俺は長門の表情をそんな風に捉えたが、強姦のさなかに見た光景が正しいかどうかは分からない。

その表情に覆い被さり唇を塞いだ。

長門はやっとの事で受け入れる。

俺のすがりたい気持ちをお前なら受け入れてくれるんだ。

そしてたちまち解決してくれるんだろ？

だから俺はこんな暴挙に出られるんだ。

長門は俺の手のひらを探し、そしてぎゅっと握った。

蹂躙する事を望む明確な意志がその力から伝わってくる。

長門は俺を欲しがっている。

肉を擦り付け、体液を混ぜ込めるような激しい繋がりをこの長門は渇望していた。

もし元の世界の長門が監視任務を解かれたら、やはりこのような肉体の繋がりを求めてくるのだろうか。

正に肉欲に溺れるこの感情を長門は開示するのだろうか。

いや、俺は初対面の無抵抗でか弱い文学少女を強姦するような男だ。

肉欲の熱に蒸し焼かれて機能の狂った大脳が勝手な都合のいい幻影を俺に見せているだけだ。

この長門は初対面の俺を受け入れているわけではない。ただ単に抵抗できないだけなのだ。

俺には淫蕩に見える泣き顔だって、本当は残酷な運命に咽ぶ苦悶の表情に違いないのだ。

だが、だからこそ俺はこの長門にすがっている。すがることができる。

抵抗できないことと、受け入れることは俺から見れば同じことだ。

長門の心情を無視してしまえば、俺のささくれ立った心を擦り付けて自己憐憫に浸っていられる。

そして長門の肉体の感触に集中してしまえばそこには快楽しかなかった。

俺は自分の内面を満たしているものが全て流れ出てしまうかのような射精感を覚え、

そしてありったけの腰の力で長門の子宮口に亀頭を叩きつけた。

射精は恐怖を覚える程の快楽と共に俺を襲った。

射精している間は何もかも忘れられた。

この世界に俺を知っているＳＯＳ団員は一人もいないのだ、ということも忘れられた。

しかし、快楽の波はそれがどんなに強烈でも速やかに引いていってしまう。

自分の体から狂った要素が蒸散していくのがわかる。

床の固さや、室内の物音、自分の体温。

肉欲に入り浸っていた脳みそが、理性と五感とを取り戻していく。

俺の下でか弱い肉体が震えている。

このままでは押しつぶしてしまうから俺は上体を起こさなければいけない。

そうしなければこの少女は痛みを感じるだろうから。

俺は絶望的な気持ちで上体を起こした。

身体はまだ繋がったままなのだ。

ふいに長門が手を差し伸べた。

俺をまっすぐ見上げる表情は複雑すぎて感情がわからなかった。

差し伸べられた手が俺の頬を撫でて初めて、俺は自分が泣いている事を知った。

長門を腕枕しながら、俺は自分語りをしていた。

表情を見られたくなかったから俺は腕を両目の上に覆いかぶせて、今まであった事、誰かに聞いて欲しかった事を語っていた。

それは退屈しのぎに世界を改変してしまう破天荒な少女の物語。

未来人や超能力者、はては宇宙人までもが登場して少女に振り回されるスラップスティックなストーリー。

一万六千回も繰り返した夏休み。

誰も彼もが記憶をリセットされている中でただ一人、

６００年近い記憶を全て保持していたのが情報統合思念体に造られたヒューマノイドインターフェイス

長門有希だったんだ。

と締めくくった。

「そのＳＦあなたの創作？」

・・・・・・ＳＦか・・・・・・

「そうだといいんだがな・・・・・・」

長門が上体を微かに起こした。

「・・・今度ＳＦ読んでみる」

「そうか、ハマると思うぜ」

目隠ししている俺からは見えないが、感触で、長門が俺の顔を覗き込んでいるのが分かった。

「あの」

長門の声はためらいがちだったが、しかし期待がこもっていた。

「また、図書館で」

終